和紙は麻やフキなどの植物繊維を漉いて作られる日本の紙で、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。
和紙は薄いですが丈夫で洋紙と比べると寿命が長いといわれています。
和紙の製造方法には機械漉きと手漉きの2種類があります。
手漉き和紙の特徴や魅力、和紙の寿命などを紹介します。
和紙の手漉きとは?
和紙の製造方法には、機械漉きと手漉きの2種類があります。
機械漉きは生産効率を上げるために洋紙の技術を取り入れた製造方法で、和紙を安く・大量に作ることができます。
手漉きは簾桁(すけた)と呼ばれる道具に和紙の原料液を入れて、水を抜きながら均等な厚さになるまで漉いて和紙を作る伝統工芸です。
手漉き和紙の主な原料
- 麻
楮が出てくるまで、主要な原料として使われていました。
- 楮(こうぞ)
現在、多く使われている原料です。
繊維が長いので、丈夫な和紙を作ることができます。
成長が早く、2~3年で収穫できます。
- 三椏(みつまた)
繊維が細いので、柔軟性と光沢感のある和紙に仕上げることができます。
日本の紙幣の原料にもなっています。
手漉き和紙の作り方
- 原料となる麻やコウゾ・ミツマタなどを刈り取ります。
- 刈り取った原料を一定の長さに切り、蒸し釜で蒸します。
- 熱いうちに皮を剥ぎ取ります。
- 剥ぎ取った皮を水に浸して柔らかくしてから、黒い部分を削り落とします。
- 灰汁やソーダ灰などを使って皮を煮て柔らかくします。
- 不純物がなくなるまで手で取り除きます。
- 皮を棒で打ち叩き、繊維を細くほぐします。
- 漉き舟に細くほぐした繊維・水・繊維が沈まず分散させようにする粘りのある液体であるネリを入れます。
- 漉き舟に入れた液体を簾桁ですくい、縦横に揺らしながら漉いていきます。
- 漉いた紙を圧搾機で、ゆっくりと水をしぼり出して湿紙(しとがみ)にします。
- 湿紙を1枚ずつ、木の板にはり天日で乾燥させたら完成です。
手漉き和紙で使う道具
- 煮熟鍋(しゃじゅくがま)
原料を灰汁やソーダ灰などで煮るための釜です。
約2時間煮熟するため、薬品に強い鋳鉄(ちゅうてつ)が使われています。
- ネリ
水の中で繊維を分散させる液体です。
トロロアオイの根を水につけると粘り気のある液が溶け出してきます。
この液体を濾過して不純物を取り除きます。
ネリは、ほぐした繊維・水と一緒に入れます。
- 簾桁(すたけ)
竹ひごと萱ひごを使って編んだ簀(す)に桁を取りつけた道具です。
液体状にした原料をすくい、揺らしながら漉くために使います。
- 漉き舟(すきぶね)
細くほぐした繊維・水・粘り気のある液体・ネリを入れるときに使う道具です。
松や杉などで作られていますが、耐久性を高めるためにステンレスを内張りしてあるタイプもあります。
- 圧搾機
湿紙を大きめの板に挟み、水をしぼり出すための機械です。
昔はジャッキを使っていましたが、現在ではモーターと圧力センサーをつかって水をしぼり出しています。
手漉き和紙の特徴と魅力
手漉き和紙には、植物繊維が絡み合うことによって丈夫である・植物繊維に方向性が生まれて滑らかで美しいという特徴があります。
また手作業で作られるため、1枚1枚に違う風合いがあることが魅力となっています。
和紙の寿命はどのくらい?最古の和紙とは?
紙は大きく分けて洋紙と和紙の2種類になります。
洋紙は西洋から伝えられた方法で製造された紙で、本やノートなどほとんどの紙製品に使われています。
洋紙の原料は木材パルプで、これを機械で漉いているため、一定した品質で大量に作ることができます。
しかし、紙の劣化を進める成分が多く含まれているため、変色や変質が起こりやすく寿命は約100年であるといわれています。
一方、和紙はほとんど薬品を使わずに作られているので洋紙より耐久性があります。
和紙の寿命は約1000年あるといわれています。
ただし、和紙は水気や湿気・紫外線に弱いので保存状態が悪いと寿命は短くなります。
日本で最も古い和紙は、702年に美濃国(みののくに、現在の岐阜県南部)・筑前国(ちくぜんのくに、現在の福岡県西北部)・豊前国(ぶぜんのくに、現在の福岡県東半部と大分県北部)で漉かれた和紙で戸籍用紙として使われていました。
奈良の正倉院で約1300年以上保管されています。
和紙の手漉き さいごに
手漉き和紙は、ほとんど薬品を使わず1枚1枚丁寧に漉いて作られているので丈夫な紙になっています。
保管状況が良ければ、寿命は約1000年と長いです。
和紙の良さを再確認してみてはいかがでしょうか。