動物園は、野生動物の保護や研究・調査などを目的としてつくられた施設です。
動物園はいつ、どこで誕生したのでしょうか。動物園の歴史を調べてみましたのでご紹介します。
動物園の歴史/世界初の動物園は
記録によると紀元前3000年頃の古代エジプト王朝。
紀元前1500年頃の中国・周の文王時代に野生動物を飼育していたそうですが、特権階級の富と権力を誇示する・趣味として動物たちをコレクションしていました。
1752年、オーストラリアのウィーンにあるシェーンブルン宮殿に作られた動物園が最古の動物園となります。
この動物園はフランツ1世が、皇后のマリア・テレジアのために約7年かけてつくりました。
マリア・テレジアは、この動物園で朝食を食べながらゾウやラクダ・シマウマをみるのが好きだったという記録が残っています。
1765年には、市民に公開されています。
フランス革命後にパリ動物園(パリ・メナジェリー)が開園しました。
この動物園は見て楽しむ娯楽要素が強く、教育や研究としての役割はなかったため見世物的な動物展示施設という意味の「メナジェリー」と呼ばれていました。
今でいう動物園を表すZOOは19世紀頃に登場します。
1828年ロンドン動物学協会が、イギリス・ロンドンのリージェントパークに動物学を目的とした動物園が開園しました。
これまでの動物園は特権階級の人たちによるコレクションでしたが、この動物園は野生動物の保護や研究・調査など動物学のためとした現代動物園の始まりであるといわれています。
動物園を表すZOOは、ロンドン動物園の名称として使われた「zoological garden」を略したものです。
その後1838年にオランダ・アムステルダム、1843年にベルギー・アントワープ、1844年にドイツ・ベルリンで動物園が誕生しました。
これまでの動物園は檻に動物を入れて展示していましたが、20世紀中頃にスイス動物園の園長であるハイニ・ヘディガー氏が「動物園生物学」を創設し、一定の動植物を集めて自然に近い状態で見せる「生態展示」を始めました。
この展示方法は、動物たちが生息していた環境に似せて作られていて、1980年代にアメリカの動物園を皮切りに発展していきました。
中でもサンディエゴ動物園は、置かれている岩が作り物だと思えないほどの擬似ぶりで有名です。
動物たちがいた環境に似せた「生態展示」は、動物園という限られた空間の中で再現が難しいという限界がありました。
そのため動物本来の習性をできるように工夫して、動物園という環境でも動物たちが幸せに暮らせることを目的とした「環境エンリッチメント」という試みが広まっています。
日本の動物園の始まりの話
17世紀前半に描かれた「四条河原遊楽図屏風」には、京都・鴨川河川敷で檻の中にいる山嵐を棒でつついて見せている場面があります。
また南蛮船が運んできた珍しい動物を興行師が買い取り、大阪の道頓堀や名古屋の大須・江戸の葺屋町(ふきやちょう)などで巡回興行が行われていました。
その後、茶屋など定まった場所で美しい鳥や珍しい動物を見せる「見世物小屋」がありました。
動物園の歴史 日本では
日本で近代的な動物園が作られるようになったのは、福沢諭吉が書いた「西洋事情」であるといわれています。
明治維新の頃は、近代化に力を入れていて欧米で行われていた万博博覧会へ使節団を派遣して都市施設や制度を学びました。
使節団の1人であった福沢諭吉が、帰国後まとめた著書「西洋事情」で初めて動物園という単語を使い、博物館という概念による動物園を紹介しています。
1873年にウィーンで開催された万博博覧会終了後に持ち帰った動物たちを東京の日比谷近くの山下町に開設した施設で飼育展示していました。
1881年に博物館が上野公園へ移されること煮なり、動物飼育施設も一緒に移されることになりました。
そして、1882年に博物館の付属施設として上野動物園が開園しました。
外国との交流機会が増えたことによって、様々な動物が上野動物園に集まり展示することで来園者数は増えていきました。
その後京都・大阪・名古屋の三大都市で開催された博覧会がきっかけとなり、都市公園が造られ一緒に京都市記念動物園・天王寺動物園・名古屋鶴舞公園付属動物園が開園しました。
現在の動物園は子どもが楽しむだけの施設だけでなく、誰もが楽しめる施設となりました。
動物園の歴史 さいごに
特権階級の富と権力を誇示するためにコレクションされていた動物たちは、その後野生動物の保護が学術的調査・研究などを目的とした動物園へと変わっていきました。
現在は子どもだけでなく、誰でも楽しめる施設となっています。
今の動物園が、どんな風になっているかを見に行ってみてはいかがでしょうか。